初めて東北に行くことにした。日本三景のうち、安芸の宮島は修学旅行で行ったし、丹後の松島は人に連れて行ってもらい股覗きをした。残る一つ、松島はまだ行ったことがなかったのでここを一番の目当てにしていた。

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高速を走っているとぽつぽつ雨が降ってきたが、松島町に着くと雲が多いながら青空が見えてきた。

松島遊覧船にカモメが飛ぶ

市場の上の食堂でふかひれラーメンを食べ松島遊覧船に乗った。海に島がいっぱい浮かんでいて、これが松島なんだという感慨があった。船と一緒にカモメがいっぱいついてきた。

観光客からいつも餌をもらっているようで、実際船の中ではカモメの餌として、かっぱえびせんが売られていた。母が自分も餌をやりたいというので、一つ買い、2人でやり始めた。母は力がないので餌をカモメのところまで投げることができず、海にすぐ落下していたが、それもカモメはうまく取っていた。もう餌がなくなってもカモメはすぐ横を飛んでいて、私のほうを横目でチラチラと見ていた。

下船してすぐ近くにある瑞巌寺へ入った。国宝や重文が多いようだが私はあまり興味がわかなかった。

その後、秋保温泉に行った。宿は「伝承千年の宿 佐勘 」だ。風呂は大きく満足だった。

蔵王に向かう途中

翌日は朝から雨。チェックアウトの時、お気をつけてと折り鶴をもらった。この日は山形との県境近くにある蔵王のお釜を見に行き、福島の温泉に泊まる予定だった。

車を走らせるとすぐに母が、腹が苦しいからと言ってシートベルトを外した。苦しいと言っているのに無理にシートベルトをはめさせるのもなと思って私は黙っていた。雨だし、走ったことのない山道を行くのだからこの時絶対にシートベルトは外させるべきではなかったのだ。

20分ほど走ったところだろうか。まだ山道には入っておらず、平坦な田舎道だった。信号のない十字路で右の横道から車が走ってくるのが見えた。私のほうの道は一時停止の標識がなかったので、相手のほうが止まるだろうと思った。するとその車は減速することなく向かってきたので、あわててブレーキを踏んだ。が、間に合わずその車は私の車の横に当たり私の車は回転して近くの木にぶつかって止まった。

私は身構えていたから何ともなかったがあわてて後ろを振り向くと、母の姿がなかった。母はシートベルトをしていなかったことを思い出した。後ろの窓ガラスが割れていた。父に「お母さんは?」と聞くと父は道路に倒れていると言った。

一瞬、死んだ?と思いながら母の元へ行くと頭から血を流していた。「大丈夫?」と聞くと「わからない」と口はきけたので、少なくとも生きていることに安心し、近くの家から出てきた人に救急車を頼んだ。

父は母と一緒に救急車に乗っていき私は警察に話を聞かれた。私の車はもう駄目なので相手の関係者の車に乗せてもらい、病院へ向かった。頭を打っているから後遺症が残ったらどうしようとか寝たきりになったらどうしようとか不安だった。

病院で頭を数針縫ってもらい、レントゲンで検査したところ、異常はないとのことで、その日のうちに連れて帰っていいと言われた。頭を打って体も打っているのに、すぐに連れていくのがためらわれたので、その日は入院させてもらうことにし、次の日に帰ることにした。

その日止まる予定だった宿はキャンセルし、近くのビジネスホテルに父と泊り、翌日ぶつかったほうの車の人の兄に家まで送ってもらうことになった。

無事家に帰り、母をみんなで車から降ろした。その後、しばらくは母は寝てすごさなければならなかったが、徐々に回復し、以前のように歩けるようになった。車から投げ出され全身を強く打って、打撲と頭の切り傷で済んだのはご先祖様かだれかが母を守ってくれたのでないかと思わずにはいられなかった。

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